今から３０年以上前にたびたび通っていた、大阪にあったちょっと変わったお好み焼き店のおはなしです。
特定の人にすごく有名なお店だった
阪急神崎川駅から歩いて数分のところにあるスーパーマーケットの一階に、お好み焼き店が入っていました。
一見ふつうのお好み焼き屋さんでしたが、知る人ぞ知る有名なお店でした。
そのお店のマスターの占いがとてもよく当たると評判で、開店前から入り口に女性が並んでいることもありました。私もその一人でした。
並んでいると、普通にスーパーへ買い物に来たお客さんに何度か尋ねられたことがあります。
「ここのお好み焼き、並ぶくらいおいしいの？」と。
たしかに美味しかったんですよ。
マスターのお母さんが焼いてくださるお好み焼きは、本当に美味しかったんです。
でも、並んでいる女性たちの本当の目的はマスターの占いだったはずです。
宣伝なし。クチコミだけ。
こちらのお好み焼き店、「占いします」との貼紙や特段の宣伝もなく、とにかく普通のたたずまいのお好み焼き店でした。
私がこのお店を知ったのは、お稽古ごとで知り合ったちょっと年上の女性に教えてもらったから。
この女性も職場の先輩に教えてもらったと言っていましたし、その先輩も誰かに教えてもらって・・・
というクチコミだけで知られたお店だったようです。（私も６～７人には話したと思います）
マスターは占いに専念
テーブル席に着きお好み焼きを注文する時に「占いをお願いします」と一言声をかけるシステムだったと思います。
占いはあくまでもサービスで無料。お好み焼きの代金だけを支払います。たしか1枚４００円位だったと思います。マスターはお好み焼きを焼く暇がないようでした。
お母さんが奥の鉄板で焼いてくれたお好み焼きは、お皿に乗ってテーブルに運ばれてきます。
占いの順番が回ってくると、お客さんはカウンター席に移動します。
マスターはカウンターの内側に座り、冷たい鉄板を挟んで向かいの椅子に占いのお客さんが座ります。
ひとり、友人や親子連れ、恋人を伴ってと、色々な方がいらっしゃいましたが、若い女性が多かった印象です。
そんなに大きなお店ではなかったですし、衝立などもありませんでしたから、相談内容は他のお客さんにまる聞こえです。そんなことは気にならないから相談したい、占って欲しいという人が集まっていました。
友人は写真を持参したり、泣き出したりしていたので、なかなかディープな空間ではありました。
名前と生年月日を元に、いわゆる「見える人」特有の占い内容でした。
相談した以上のことを言ってもらったりして、よく当たっていました。
なぜ占いは無料だったのか
一度「何故こんなに当たる占いを、無料でしているんですか？」とマスターに尋ねたことがあります。
「こういう力はお金をもらうとなくなってしまうから、頼まれた時だけ無料で占うことにしている」
という風なことをおっしゃっていました。特別な修行の経験もおありのようでした。
当時は「そんなことがあるのか・・・」と驚きましたし、純粋に興味があったとはいえ無粋なことを質問した私におはなししてくれたマスターに「本物」の空気を感じました。
お店が無くなっていた
私の環境が変わり、引越しなどを経て数年後「マスターにもう一度占って欲しい。今どうされているのかな」と思い出した時にはお好み焼き店が無くなっていました。ネットで検索すると、あのマスターはどうしているのかなというブログはあったのですが、お店を移転したのか廃業したのか、現在もどこかで占いをされているのかも分かりませんでした。
どこかでお元気にされていることを祈っています。
